木村匡也(きょうやブログ)ThePowerOfVoices

きむらきょうや(木村匡也)のブログ・ナレーター 声で生きる

この話で心をつかめ!ダルビッシュのつぶやきに学ぶ:まだスポーツは軍隊式根性論でいいの?

話し方が上手くなりたい人へのティップを発信していますが、今回は私が話す予定だった講演のネタを丸々公開します。本当は3月の講演で語る予定でしたがコロナ騒ぎでキャンセルされまだ使っていません。

 

 

ダルビッシュのつぶやき

まだ講演会などで十分使えると思います。講演とかスピーチの予定がある人、どうぞ使ってください〜

さて、ダルビッシュ有選手のツイッターを見てますか?彼の発信はフォローしていなくても度々ニュースになったりしますからご存知の方も多いと思いますけど。とにかく常識にとらわれず「独自」の考え方発信し続けており、彼の考え方に刺激を受けているフォロワーもたくさんいます。

 

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これまで野球界にあった「常識」とか「しきたり」の外から発言していて、あの「喝!」でおなじみの張本勲さんをディスったりして、面白いんです。

またいろんなクソリプ(見当違いの返信・雑言)を撒き散らしてるヤツに対して「お前どんだけ優秀なん?」と諌める発言をしたり。よー言うてくれた!という痛快さがあるつぶやきなのです。

 

真剣にお尋ねします

さてダルビッシュ選手に関する意見は様々あると思いますが、ぜひ今この話を聞いている(読んでいる)人に真面目に考えてもらいたいことがあるんです。

 

まだ日本のスポーツは軍隊式の根性論でいいのか?

 

ということです。

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何を言っとる!喝!!!

 

ケイトリン・オオハシの成功

みなさんケイトリン・オオハシって知ってますか?ケイトリン・オオハシって今やアメリカで知らない人はいないくらい大人気の体操選手です。つい最近までUCLAの大学生でした。なのに全米の国民的スターと言っていいほどの人気があります。ジュニアの頃から全米選抜チームに入り、6度のオールアメリカン、もう栄光の履歴はここでは書けないほどたくさんあり、華やかそのもの。そして去年(2019) 床運動で10点満点(パーフェクト10)を達成。その動画はYouTubeに上がっていますが、驚異の 再生回数9千8百30万回以上!(3月18日現在)

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ケイトリン・オオハシですよ。

 

クリスティーヤマグチ(スケート)じゃないからね

 

度が過ぎた練習はスポーツの喜びも奪い去る

でも実は彼女がUCLAに入ったときもうすでに体も精神もボロボロでした。ユースで勝ち取った名声と栄光、そんなものはもう要らない、すごい選手にはもうなりたくない、とコーチに言ったのです。

 

わかりますか?

 

「勝つ!」ことは選手をボロボロにする側面があります。肉体的にも精神的にも、です。全てを犠牲にしてでも勝つ!いいや勝てばいいんだ!という価値観で戦ってきたスポーツ分野はたくさんの犠牲者を産んできたのです。

 

勝った!という栄光だけを残して、肉体はボロボロ、精神もズタズタで、今や消えてしまったスポーツ選手がどれだけいることか?

 

薬物中毒になった選手もいるじゃないですか!

 

スポーツに怪我はつきもの?

勝利偏重主義のスポーツは、選手の人生を台無しにしているのです、、、そんな勝利でいいんですか?そんなスポーツでいいんですか?

 

張本勲さんは言いました。

「ケガを怖がったんじゃ、スポーツ辞めたほうがいいよ。みんな宿命なんだから、スポーツ選手は」

「苦しいときの投球を体で覚えてね、それから大成したピッチャーはいくらでもいるんだから。楽させちゃダメですよ」

 

私たち50過ぎの世代はスポーツやってた人は完全にこのやり方でシゴかれてきました。いやスポーツだけじゃなく勉強も仕事もそうです。ですから中身は精神論が好きなんです。苦労して苦労して努力の上に花が咲く!スポーツ根性論が大好きなんです。それが性に合うんです。

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根性あるのみ!

 

ダルビッシュ選手のつぶやきにも、最初はアメリカ風な考え方だな〜と思っていました。そう思ったのは私だけじゃないんです。あるテレビ番組が飲み屋でダルビッシュの意見と張本さんの意見どっちを支持するという取材をしたんです。すると、おじさん世代のサラリーマンはみんな張本さんを支持しました。

わかりますね…根性論は日本人が支持してるんです。あなただってひょっとしてそうではありませんか?

 

 

ダルビッシュは「違う」と一石を投じているのです

 

ケイトリンのコーチの猛反省

ケイトリン・オオハシのUCLAのコーチは、ヴァロリー・コンドスさんという女性です。30年近くUCLAの体操のコーチをつとめたベテランです。しかし実は、彼女自身は体操をやったことがないコーチでした。バレエ(踊りの)のダンサーとしての経験を買われて体操のコーチになった人でした。

www.youtube.com

 

ヴァロリー氏は未経験なので他の優秀なコーチの必死に勉強し、その真似をします。30年前の話です。するとどうなったか?なんと次第に彼女は、独裁的な支配的なコーチになっていきました。それでも「勝っていた」から全部許されたのです。

 

どれだけ選手のことを罵倒しても精神的に凹ませても、勝っている業績を残せたら、チャラになったんです。

 

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コーチになって数年が経ったとき、選手たちから「コーチ、選手ミーティングをお願いします」と言われました。彼女はまたダメ出しをしてやろうと、やや喜んでミーティングに参加しました。でもそこでは

 

 

「私たちはサポートされたいんです、見くびられるんじゃなくて」

「私たちに動機を与えてくれる指導をしてもらいたいんです、プレッシャーを与えて、いじめ抜くことよりも」

 

「屈辱的な言葉で心を凹ませることより、元気が出るコーチングをしてもらいたいんです」

 

選手たちの涙の訴えは2時間も続きました。

 

ヴァロリーコーチは呆然としました。

 

ちょっと浮き足立ってミーティングに参加したヴァロリーコーチ。完全に鼻っ柱を折られました。でも彼女はこう思ったのです。やめなければ!この方法はやめなければ!と

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勝利を考え直す(再定義する)

 

そしてヴァロリーコーチは、思いました

 

 

私自身の中で「成功」という意味を考え直さないといけない!(成功という意味を再定義しなければ)

 

勝利(成功)の意味を再定義せよ

勝利を得たとしても、その選手の人生が台無しになってしまうのを「コーチング」と言えるのだろうか?

 

それはもはや勝利ですらない。人生の敗者を生み出しているのだから、、、、

 

彼女は、真摯に自分のやり方を反省し、コーチングの手法を改めました。

 

今彼女は20世紀を代表する体操コーチとして体操競技の殿堂にその名が記されています

 

ある少年野球の父親のつぶやき

ダルビッシュ選手はこうつぶやきました。

「度が過ぎると練習はあなたの才能を奪う」と

 

あるアメリカの野球少年の父親はこう言いました。

「2ドルもしないトロフィーのために子どもの腕を犠牲にはしない」 「コナー(うちの子)には長くプレーして、やめるときも健全な腕のままでいてほしい」

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子供の健康を害してまでやる意味があるのか

 

「勝つことも大事では?」と聞かれるとこう言いました。

 

「私はそうは思わない。子どもたちをケガなく成長させ、技量を上げる方が大切だ。そうすればおのずと勝利はついてくる」

 

 

どうでしょうか?同世代の根性論好きなみなさん(私もそうでした)このダルビッシュたちの考えに向き合う勇気がありますか?反論するならするで、本当に自分の子供がボロボロになってもやらせますか?

 

 

指導者としての責任は?

ダル選手の「度が過ぎると練習はあなたの才能を奪う」

にはまだ続きがあります。

 

またある程度、度を理解することで沢山の才能を守ることができる。 貴方が指導者の場合、たくさんの人の人生、才能を預かっていると理解しなければいけない。 無知で指導するのは、ただの無責任であると思う。

 

今社会的に指導者の立場にあるだろう、40代、50代、60代の人よ、、、これだけの正論に「責任」を持って反論ができますか?私たちは才能を守っているのでしょうか?私たちが受けてきた軍隊式根性論は

 

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才能のある人(同僚たち)をたくさん潰してきたのを見てきたでしょう?

 

アメリカも昔は軍隊式だった

アメリカも以前は軍隊式だったのです。でもこの30年で改革をしました。聡明な人は悟ったのです。圧力で押さえ込んでもダメなんだと、、、

 

 

ダルビッシュ選手が、もう一つつぶやいています

 

投げ込まないと身体は覚えないって言うけど、なんで投げ込まないアメリカのピッチャーのレベルって高いんやろうか

 

結果が全てというなら、この結果にどう反論します?

 

あなたはそれでも張本さんを支持しますか?それともダルビッシュの言ってることに興味が湧きましたか?ケイトリン・オオハシを育てたヴァロリー・コンドスの反省を見てみたくなりませんか?

 

勝利の意味、社会人として考える

そして、これはスポーツ界だけの話じゃないってことです。社会の至る所で、根性論では世界に勝てないことが、明らかになってきました。

 

まだ軍隊式根性論でいいの?

 

あなたの仕事の分野、これまで先輩たちから叩き込まれてきた考え方、今のあなたの考え方、その全てを再定義するときなんじゃないですか?

 

勝利が、幸せな人生を奪うならそれは人生の勝利ではない。

 

最後に、テニスのサーシャ・バイン氏(大坂なおみの元コーチ)が試合に負けて泣いている高校生に言った素敵な言葉をご紹介します。

 

泣かなくていいんだよ。

試合は「勝つ」か「学ぶ」かだ。「負け」はない

 

 

ご静聴、ありがとうございます。

 

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