木村匡也(きょうやブログ)ThePowerOfVoices

きむらきょうや(木村匡也)のブログ・ナレーター 声で生きる

【放送100年】街頭録音の歴史【2025年に向けて】

放送100周年がやってくる

実はあと5年後、2025年に日本で放送が始まって100年目を迎えます。結構スゴイことなのですがNHKは多分何もやらないので、ワシが勝手に思いついたことを記事にしてみようと思います。
 
 

銀座のテレビスタッフ

銀座にはいつもテレビのスタッフがいます。ニュースやワイドショーなどのインタビューを録ろうとしているんですが、ここ銀座通りでインタビューをしてるって実は大変古い歴史があるんですぞ〜
 

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天下の銀座だぜ〜!



 
「街頭録音」あるいは「街頭インタビュー」という手法は戦後すぐラジオで始まりました 。1945年(昭和20)9月からというから、もう75年近い歴史がある伝統的な番組作りの手法なのですね〜。
 
 
今もBSNHKで「ガイロク」という番組をやっておりますが、あれを作っているスタッフたちは、知ってか知らずか?実に正しいNHKの伝統を受け継いで番組を作っているのです えらい!
 
 
ガイロクは、まさに令和によみがえった「街頭録音」なんです。まああまりBSNHKみてる人はいないかも知れませんが?ま、そうなんです。
 

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あの〜ちょっとお話聞かせてもらっていいですか?

 
戦後すぐに始まったラジオ番組「街頭録音」ですが、なんとスタートは昭和20年9月29日(スタート時の番組名は「街頭にて」)というから超びっくりですよね!
 

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東京大空襲あとの両国あたり
 
敗戦からわずか1ヶ月ちょっとの頃ですよ〜多分、東京じゅうほとんどこんな焼け野原の頃に始まったのです。
 
 
GHQの「民衆の声を伝えよ」という命令のもと、米国のラジオ「Man on the Street」のフォーマットを土台に一般市民の意見を放送しようとしたのです。GHQのスゴイ意図を感じますね〜
 

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ケーディス(左)とマッカーサー(右)
 
銀座の資生堂前で収録した時には、あまりの珍しさに黒山の人だかりができました。そしてNHKのアナウンサー藤倉修一(ふじくら・しゅういち)さんがマイクを持って街頭の人々にインタビューをしました
 
 
まあ画像の権利関係がありますので、ちょっとその時の様子をスケッチにした画像を貼ってみます。奥のビルが資生堂、銀座通りにはまだチンチン電車が走っております。 どうです?
 
すんごい人混みでしょう?
 

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NHKのアーカイブスを元にスケッチを作成しております
 
 
ラジオの録音にすんごい人だかり!
 
まー確かに、今でもラジオには根強いファンがいて、公開収録などでたくさんの人が集まったりしますが、ここまでの人はなかなか集まりませんね〜
 
 
 

街頭録音に群がる人々

この街頭録音という番組はとてもチャレンジャー精神がある番組でして「公開収録」でインタビューすると、人々が本音で喋ってないかも知れない?ということで、隠しマイクをつけてこっそりとインタビューを録音したり!とけっこう際どいことに挑戦していました。
 

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コートの中にマイクが仕込んである!
 
すごいですね!昭和20年にすでに電波少年みたいな隠し撮りがあったというんですよ、、、、
 
 
 
ちなみに、さらに後の時代、1970年ごろ、全くこれと同じ手法で有名になったラジオのレポーターがいました。それがなんとあの久米宏さんなのです!

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うーむ、似てねぇ〜?
 
 
久米宏さんは、永六輔の土曜ワイドラジオTokyoのレポーターとして、あっちこっちで密かに隠しマイクのインタビューを繰り広げて、それで人気者になったんですよ
 
 
 
ときには、ホームレスの格好して隠しマイクでこっそり録音したり、NHKの受付に全くの素人を装って、突撃したり、今やったら逮捕されそうなことをガンガンやっていたのです。
 
 
のちのザ・ベストテンやニュースステーションでの大活躍を知ってる世代からはちょっとびっくりですよね!?
 
 
 
(注意)ちなみに今隠しマイクで録音したインタビューを勝手に放送に流したりすると本当に大問題になるので、注意しましょうね。
 
 
話を、昭和20年のNHK街頭録音に戻すと、なんと当時アンタッチャブルだった有楽町のパンパンの総元締め「ラクチョウのオトキ」さんにもインタビューしているです。
 
 

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あーら、お兄さん!
 
女性売春婦の声を天下のNHKで放送したんですからスゴイですね
 
藤倉修一アナがやや怖い声で「真面目に働いている人もいるのに、売春してることをどう思ってるの???」と詰め寄って質問するんです。
 
 
でも、ラクチョウのおトキさんも負けていない。
 
カタギになろうとしても、ならせてくれない世の中もどうかしら?と反撃してくるのです。今どこまで見られるか分かりませんが、とりあえずリンク貼ってみました。
 
 
 
藤倉修一アナは、結構最近まで生きていたので「徹子の部屋」なんかにひょっこりゲスト出演しておりましたね。
 
 
 
ご自分の頭がハゲていることが藤倉アナの自虐ネタになっていて、、、NHKの廊下で誰かが「あー滑った」なんて言おうものなら、なに?僕の頭のこと言った?とすかさず突っ込んでいたらしいです。でもとってもダンディでお優しそうな方でした。
 
 

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とっても優しそうな藤倉アナ
 
 
もう一つちなみに、この藤倉アナウンサーは、日本の戦争中に行われた最後の相撲の実況アナウンサーでした。昭和20年夏場所のことです。この相撲中継はなんと国内では非公開なのに、海外(東南アジア)には短波放送で届けられたのです。
 
 
まだ日本は大丈夫だ!空襲を受けてもまだまだ大相撲中継もやってるぞ!というアピールを兼ねて、空襲でボロボロになった両国国技館で行われました。観客は、負傷した兵隊さんほんの一握りの招待客のみ。淋しい場所でした、と藤倉アナウンサー
 
 
誰が優勝したんですか?と聞かれると、藤倉アナウンサーはすかさず「備州山(びしゅうやま)です!」と即答しました。
 
すごいなぁ、プロだなぁ!と関心したことを覚えております。私は相撲ファンなのに、一年前の今場所誰が優勝したかも憶えてませんもの


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備州山大八郎 身長167cm、体重128kg


 

あと5年で100周年

 
日本の放送はあと5年で100周年です。放送がもたらしたいいことも悪いこともありますが、ともかく100年です。NHKという団体は不思議なことに、あまりそういう区切り的なものをお祝いすることに熱心ではないので、私が勝手に書いておきます。100周年おめでとう!
 
 
ちなみに、今放送中のガイロクは、BSNHKで。番組ナレーターは槇大輔先生なので、このナレーションを聞くだけでもとっても勉強になります。